LAYER THE WORLD / 高橋哲史

私たちは普段外部からの雑多な刺激にさらされています。その中で情報や想いを上書きし、消去や保存、塗りつぶしをしながら自分なりのレイヤーを重ねていると言っていいでしょう。年齢や国籍、歴史や未来がどうあろうと、稚拙だろうと、下世話だろうと、エレガントだろうと、抽象も具象も、ハイもロウも。描いて、塗って、つぶして、覆って、重ねていくわけです。光の色を重ねると無色になるように、メッセージやキャラクターなどのイメージも複層化することで、個々の意味は無力化されます。
かつて「完全な絵」というものがありました。しかし現在はそういったものを作るのは不可能だし、必要もなくなりました。完全なものが出てこなくなったことは残念ですが、一方でいろいろな所が開放されたり、ほぐれたり、溶けたりしました。そうして様々な価値が雑に重なった世界になったように思います。